『パリが奥歯にはさまった』
〜オモシロ歯ばなし

<たかのこういち(著)>
<松本隆治(絵)>

六本木、カフェテラス。

道行く人が振りむくほどの美人が二人、はつらつと談笑している。土曜日の午後だ。

「仕事やめるなんて、もったいないよ」。

ニューヨークヤンキースのキャップをかぶった女性が言う。

「でも、いましかないのよ」。

対面に座るショートヘアーの女性が答える。

鮮やかなイエローのカーディガンの腕をまくっている。
二人とも個性的なファッション、いかにもやり手のキャリアガールだ。

「先輩はキャスターとして、苦労してここまでのキャリアを積んできたのに、惜しいわ」。
二人は、局アナの先輩と後輩だ。

「でも、いま彼を失ったら一生後悔するわ」。
先輩と呼ばれたショートヘアーが言う。

「どうも仕事バリバリの女って、男に女性の部分をほめられると、コロリとまいるんだからね。ま、結婚も悪かないか。ダメなら別れればいいんだから」。

そういえば、胃は大丈夫? 胃が悪くて口臭があるって言ってたわね、と後輩。

「それが口臭の原因は、胃じゃなかったの。奥歯だったの」。

「へえ、奥歯?そんなことあるんだ」。

いま、歯科医院に通っているの、と先輩。

「パリ行きまでに治さなくちゃ」。

そうね、奥歯にパリがはさまっちゃうわ、と後輩が言い、二人はおおらかに笑った。

「結構多いんですよ。奥歯は歯磨きもむずかしから」。
西新宿歯科TOYOクリニック汐見先生は、その通りとうなづく。

「なかなか気がつかないんです」。